2013年8月23日金曜日

透明人間になりたかった。

透明人間になりたいと思っていた。

バスにタダで乗れる。駅の改札も誰にも呼び止められずに通れる。飛行機だって宇宙船だって乗れる。

クラスのかっこいい男の子のそばにいられる。“なんだよお前?”って顔をされずに。

テレビに出てるかっこいいアイドルにだって会えるよ。ステージの上に上がってずーっとくっついてるの。

わたしの不細工な顔も絶壁の頭も手足の短いずんぐりむっくりな体も見られず、彼のすべすべしたお肌を近くでうっとり見ていられるんだよ。わーい♪


学校から帰ってくるとママは大抵いなかった。昼間は事務のお仕事をしていたから。
夕方、ママが帰ってきて一緒にすごす。でも、あっという間にいなくなる。夜になるとママはまた違うお仕事に出かけるから。





寂しくて、弟と夜の道を歩いてママのいる店へ。
ジュースを飲んでやお菓子を食べたらタクシーを呼ばれ。アパートへ帰される。ママはお仕事だから。

透明人間になればママの邪魔にならず一緒にずーっといられるよ。
あー、透明人間になりたいなあ。



見ていられるだけで幸せだと思えたら、永遠に平和だ。
そう思えなくなったのはいつからだろう?

自分が見ている人の目に自分が映っていないなんて。さびしい。さびしくてさびしくて砂になって消えてしまいそう。いや、砂になって消える必要はないよ。だって私は最初から見えていないんだから。


こんなにシミだらけの顔でも、太ってお腹が出ていても、脚が蚊に食われた後だらけでも、私が見ている人の目に私が映っていて欲しい。

見えていないと思って悲しくてつぶれそうになって、見えていたとわかって、飛び上がるほど喜んで。
疲れるわーへとへと。


幽霊は観たことないし、信じてもいないけれど、テレビに映ってる心霊写真の幽霊さん。“わたしを見て~さびしいよ”って言ってるのかな。親近感わいてしまう。




(※若いお兄さんに恋でもしてるのか?と思われる文章ですが、男の人に恋をしているわけではないです。むしろ恋ってなんだっけ?鯉とは違ったっけ?状態っす※)

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